いなづまやきのふは東けふは西(其角)
焦門十哲の筆頭にも数えられる其角の句です。
【いなづまやきのふは東けふは西】(いなづまやきのうはひがしきょうはにし)
(意訳)稲妻が昨日は東で光ったと思うと今日は西で光った。まったく世の中、どこで何が起こるかわかったものではないよ。
この句、言っていることは理解できますが、どうも実景ではないようです。経験上稲妻(稲光)は普通、一度の雷雨の中で東に光ったり、西に光ったりするもので、「昨日は東今日は西」というような移動の仕方ではないと思います。観念にもとづいて、頭の中で作った句と思われます。おそらく世間の受けを狙ったのでしょう。現に、乙由の「うき草や今朝はあちらの岸に咲」とともに、人生の浮沈、毀誉褒貶を寓意した句としてもてはやされました。
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さて、昨日今日と寒気が入っているとかで、全国的に不安定な空模様なのだそうです。京都でも激しい雷雨になりました。大きな雷鳴がしばらく続いたかと思うと、豪雨が降りました。そんな中家人に、『雷は、なんでカミナリって言うか知ってるか?』 と尋ねたところ知らなかったので、『神さまが怒ったはるんや。神が鳴るから“神鳴り”って言うねん』 と、教えてやりました。
「神さまって、なんていう神さま?」
『それは菅原道真やろな。天神さんや』
「へぇ、そうなんや。でもなんで怒ったはんねやろ」
『無実の罪で、太宰府に流されはったさかいに恨みに思ったはるのや。そもそも天神さんのいわれくらいは知っとかなあかんで。皆、菅原道真の伝記を知らなさすぎるねん。せやから雷落とさはんねん』
「え? どういうこと?」
『雷言うたら電気やろ。でんき つながりやがな』
【687】
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