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2013年7月17日 (水曜日)

我が家に居所捜す暑さかな(宋屋)

 「京都の夏は暑い!」とよく言われます。たとえば京都市外から電車に乗って、京都駅で降りたときに実感としてわかります。乗る前の体感温度と降りた時の体感温度が断然違うのです。ムッとする暑さに体を包み込まれるような印象です。江戸時代中期の俳人で京都の住人宋屋は、そんな京都の暑さを次のように詠みました。

我が家に居所捜す暑さかな】(わがいえにいどころさがすあつさかな)

 意訳するまでもないですね。家の中でこんなふうに叫んでいたのではないでしょうか。

 『あ~、暑ぅ。勝手知ったる自分の家や、どこが一番涼しいかわかってるようなもんやけど、これだけ暑いと、家じゅうどこ行っても一緒やな。あっちこっちうろうろするばかりで、落ち着かへんわ~』

 宋屋(そうおく、1688-1766)は、蕪村と同じく早野巴人の門下で、蕪村より三十歳近く年長です。師の巴人が江戸へ戻ってからは、京都の門弟を束ねる存在だったそうです。旅を好み、芭蕉の奥の細道をたどったりもしています。次も宋屋です。

とろとろと扇も眠るすゞみ哉】(とろとろとおうぎもねむるすずみかな)

 この句はいいですね。居眠っているのは女性でしょうか。きっと暑さをしのぐ居所を見つけたのでしょうね。「とろとろと」がよく効いています。そして「扇も」の「も」が意味深です。どういう情景なのかなぁ。いろんなことを想像させて、なかなかおしゃれです。こういう含蓄のある句を詠む宋屋は、いかにも京都の人という気がします。そして鬼貫の句です。

冬は又夏がましじゃといひにけり】(ふゆはまたなつがましじゃといいにけり)

 ははは、笑ってしまいます。鬼貫は同じ関西でも伊丹の人ですが、まさに京都の夏にぴったりの句です。そうなんです。今は「暑ぅてたまらん」と言ってますけど、冬になると「寒ぅてたまらん、夏のほうがまだましや」と言うのも、京都の人の特徴です。事実、京都の冬は底冷えするんですけど、京都人は、そのときどきによってお愛想を言うというか、つい御追従を言う傾向があるのも、また無きにしも非ずです。ある意味イケズのあらわれです。

 というわけで、この二三日雨の日が続いていましたが、ここにきて再び暑さがぶり返してきました。いよいよ夏本番。なにはともあれ、この季節に京都旅行を考えておられる方がございましたら、ぜひ心してお越しくださいませ。ホンマ、暑ぅてイヤになりますわ(笑)

【690】

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