夢よりも貰ふ吉事や初茄子(蕪村)
蕪村の句を鑑賞します。
「几董子より初茄子を贈りたまひければ」
【夢よりも貰ふ吉事や初茄子】(ゆめよりももらうきちじやはつなすび)
意訳:(弟子の几董より初茄子を贈っていただいたので)一富士二鷹三茄子というように、ナスの夢を見るとよいことがあるというけれど、こうして現実に初茄子をもらったほうが吉事である。
几董=高井几董(たかいきとう)、江戸時代中期の俳人、蕪村の門弟。
ーーーーー
ナスは夏を代表する野菜のひとつです。「秋ナスは嫁に食わすな」ということわざもあって、秋物のほうがおいしいとも言いますが、実際は7月頃から旬を迎えます。この句、いわゆるお中元のお返しに添えた挨拶句です。作句の背景を勝手に想像してみました。
ある日のこと、蕪村の元に 「初物です。どうぞご試食ください」 と、一盛りのナスが贈られてきました。
『誰から? あぁ、几董からのお中元か。おいしそうなナスやな。これはお礼に一句詠んで返さなあかんな。なんかええ句は…、そうや 【夢よりも貰ふ吉事や初茄子】 というのはどうやろ。“初夢にみると縁起がいいとされるナスも、所詮は夢でのこと。こうして現実にもらうほうがよほどめでたい。それも初ナス。几董さんありがとう、ごちそうさま” っていう意味や。初夢と初ナスの初つながりに、吉事もよぉ効いてる。よっしゃ、これでいこ。ええのが出来た』
なんちゃって(笑) さすがに蕪村、上手に詠むものです。
ーーーーー
さて、我が家にもお中元が届きました。ナスはナスでも浅漬けの京漬物です。私には句を詠んでお返しすることなど、とてもできません。せめてブログに写真を添えたいと思います。どうもありがとうございました。とてもおいしかったです。m(_ _)m
(注)この句、蕪村全集(講談社刊)では、句風存疑とされています。
【701】
« おめでたい話(Tシャツ) | トップページ | 浅漬の色や胡瓜の深みどり(素外) »
「 勝手に鑑賞「古今の詩歌」」カテゴリの記事
- 夏風邪はなかなか老に重かりき(虚子)(2014.05.21)
- 後夜聞仏法僧鳥(空海)(2014.05.20)
- 夏といへばまづ心にやかけつはた(毛吹草)(2014.05.19)
- 絵師も此匂ひはいかでかきつばた(良徳)(2014.05.18)
- 神山やおほたの沢の杜若ふかきたのみは色にみゆらむ(藤原俊成)(2014.05.17)
コメント