ステテコや彼にも昭和立志伝(小沢昭一)
昨年末に亡くなられた小沢昭一さんの句です。
【ステテコや彼にも昭和立志伝】(すててこやかれにもしょうわりっしでん)
見た瞬間、思わず吹き出してしまいました。でも、このおかしさがわかるのはおそらく五十歳以上の年配でしょうね。昭和といえば、もはや四半世紀以上も昔です。当時のおとうさんたちの帰宅後のスタイルは、だいたいがステテコにさらしの腹巻姿でした。もちろん、いまどきのカラフルなおしゃれステテコではありません。
なんといっても、『彼にも』の『も』が笑えます。昭和と言う時代は立志伝を語るにふさわしい時代でした。この句が詠まれたのは一億総中流と言われるようになったころです。おとうさんたちはひとりひとりたくましく生きていたのです。どんなダサい姿であっても、彼には彼なりの立志伝があったのです。中村草田男の「降る雪や明治は遠くなりにけり」が明治を詠み込んだ名句とするならば、「ステテコや彼にも昭和立志伝」は昭和を詠み込んだ名句だと思います。
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