いつとても恋しからずはあらねども秋の夕べはあやしかりけり(よみ人知らず)
古今集を眺めていたら、546番よみ人知らずの歌に目がとまりました。
【いつとても恋しからずはあらねども秋の夕べはあやしかりけり】
(いつとてもこいしからずはあらねどもあきのゆうべはあやしかきけり)
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『よし、今日はこの歌を解釈してみよう。まず、上の句の いつとても恋しからずはあらねども は、“いつといって恋しくない時はないのだけれど” でいいだろう。で、下の句は 秋の夕べはあやしかりけり か。 えっ? あやしかりけり ってどういう意味?』
どうやらこの歌のポイントは「あやし」にあるようです。ひらがな書いてありますが、漢字で書くとすれば、いったいどんな字をあてればいいのでしょうか。
『う~ん、「あやし」ねぇ…。怪談・怪人の「怪し」では、恐ろしいとか不思議だってことになる。奇術・奇人の「奇し」に近いようだけど、珍しいって意味にとるのも、もうひとつピンとこない。まして貧賤・卑賤の「賤し」はありえない。…あ、そうか。妖艶・妖精の「妖し」だ。なまめかしくなる。色っぽくなる、って意味なんだ。 よっしゃー、読めた~』
というわけで、当ブログの勝手な意訳です。
意訳:どんな季節でも人を恋しく思わないときはないのだけれど、特に秋の夕べに限っては、気分が色っぽく、なまめかしくなるものだ。
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食欲の秋・読書の秋・スポーツの秋・芸術の秋・物思いの秋…、秋を表現するにはいろいろな言葉がありますけど、この歌の作者は“色気の秋”でもある、と言っているわけですね(笑)
【734】
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