« 夕づく日さすやいほりの柴の戸にさびしくもあるかひぐらしの声(前大納言忠良) | トップページ | いつとても恋しからずはあらねども秋の夕べはあやしかりけり(よみ人知らず) »

2013年8月29日 (木曜日)

仰のけに落て鳴けり秋の蝉(一茶)

 一茶の句を鑑賞します。

仰のけに落て鳴けり秋の蝉】(あおのけにおちてなきけりあきのせみ)

ーーーーーーーーーー

 (意訳)道を歩いていると突然セミが飛んできて地面に落ち、ひっくりかえってしまった。それでもまだ鳴き続けている。「セミの季節もそろそろ終わりか。もう秋だなぁ」

 一句の眼目が「あおのけに」にあるのは言うまでもありません。寿命を迎えたセミを表現するのにぴったりの言葉です。いかにも羽をバタバタとさせている感じです。上の句形は八番日記のもので、七番日記には、

仰のけに寝て鳴にけり秋の蝉】(あおのけにねてなきにけりあきのせみ)

 とあります。これを擬態語であらわすならば、「ヒューッ」と「ゴロン」の違いで、これは断然「ヒューッ(と落ちた)」のほうがいいですね。同じ句を何年もかけて推敲しているわけで、一茶などは即興で詠んでいるように見えても実際は苦労しているんだなぁ と、むしろそっちのほうに感動します。

7331

【733】

« 夕づく日さすやいほりの柴の戸にさびしくもあるかひぐらしの声(前大納言忠良) | トップページ | いつとても恋しからずはあらねども秋の夕べはあやしかりけり(よみ人知らず) »

勝手に鑑賞「古今の詩歌」」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 仰のけに落て鳴けり秋の蝉(一茶):

« 夕づく日さすやいほりの柴の戸にさびしくもあるかひぐらしの声(前大納言忠良) | トップページ | いつとても恋しからずはあらねども秋の夕べはあやしかりけり(よみ人知らず) »