涼しさや鐘をはなるゝかねの声(蕪村)
【涼しさや鐘をはなるゝかねの声】(蕪村)
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私の好きな句のひとつです。門人の也好への手紙に、この句と 「さみだれや大河を前に家二軒」 「雨後の月誰そや夜ぶりの脛白き」 の三句を評して、
「当時流行の句調とはいささか違申候。流行のぬめりもいとはしき心地仕り候 」(いま流行している句とはいささか違う調子で作ってみた。今風のものはぬるっとして、趣向がないような気がする)
とあります。別の門人にも、ほぼ同様の言葉を添えていますので、蕪村自身、自信作だったのでしょう。
『すずしさや かねをはなるる かねのこえ』
夏の朝、夜明けの鐘が四方へ広がってゆくさまを 「離るる」 としたのは、たしかにハッとさせる趣向です。「音」ではなく「声」としたことによる清涼感、「鐘」を二度繰り返した穿ち、調べのよさは、蕪村の作品の中でもひときわ精彩を放っています。
(方広寺にて)
【709】
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