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2013年8月22日 (木曜日)

「中国文学十二話」(奥野信太郎著)を読んで

 先日の下鴨納涼古本まつりで見つけた本です。昭和43年8月20日発行とあります。

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 この本、昭和39年1月にNHKのFM放送で放送された速記録を整理したものだそうです。 昭和39年といえば1964年、かれこれ50年前のことですが、中国文学の長大な歴史に比べれば50年前の本は新刊のようなものです。私には十分興味深く読めました。

 内容的には、中国文学史または中国文学論といえばいいのでしょうか。詩経・楚辞から始まって、左伝・史記、唐詩、戯曲、四大奇書、紅楼夢など、ほぼ時代順に取り上げて解説されます。

 『…なんといっても文学史は文学の歴史でありますから、まず作品を読んでいただきたい。このごろは、どうも作品を読まないで、文学史を読んだだけで文学史を語る人が、しかも作品を読んだように思う人が世間にふえた。ふえたというより昔からそうだったかも知れませんが、そういう傾向がある。実はわたくしは、文学を語る場合には作品を読んで、しかる後、作品に促されて文学史を読む、この態度をとっていただきたいと思うのです』(“三、陶淵明と謝霊運” より引用)

 というのが著者の主張であり、本書の目的です。そのため著者は、全編を通じて各時代の有名な作品紹介につとめています。その語り口が、一般向けにされた講演の記録だけあって、いかにも読んでみたくなる調子のよさです。「です」「ます」調の文体は読みやすく、かつわかりやすくまとめられています。ただ、どうしても中国文学は敷居の高いところがあるので、たとえば論語・唐詩の一編、三国志の一挿話などに接して、「いいなぁ。いいこと言ってるなぁ」と興味を持ち、さらにほかの作品にも親しみたいと思う気持ちがあれば、本書は絶好の案内書になると思います。

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