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2013年9月10日 (火曜日)

川風の涼しくもあるかうち寄する波とともにや秋は立つらむ(紀貫之)

 古今集巻四より、紀貫之の歌を鑑賞します。

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「秋立つ日、うへのをのこども、賀茂の河原に川逍遥しける供にまかりてよめる」

170【川風の涼しくもあるかうち寄する波とともにや秋は立つらむ

※うへのをのこ(上の男)=殿上人。

※川逍遥(かわしょうよう)=川遊び。

意訳:(立秋の日、殿上人たちが賀茂川の河原で遊ぶのに、供として一緒に行って詠んだ歌)川に吹き寄せる風の、なんと涼しいことだろう。(きっと)岸に寄せて立つ波とともに秋も立つのであろう。

 前書きからわかるように、紀貫之が殿上人のピクニックに同伴して詠んだ歌です。「川逍遥」とは川遊びのこと。立秋のこの日、賀茂の河原に席を設けて、殿上人たちの宴会が繰り広げられました。身分の低い貫之が供に加えられたのは、余興で歌を詠むためです。 宴もたけなわになり、

 「このへんで歌でも披露せい!」

 そう言われた貫之は、おもむろに立ちあがって朗々と歌います。

かわかぜのぉ すずしくもあるかぁ うちよする~ なみとともにやぁ あきはたつらん~

 立秋なので秋風が吹き寄せる。賀茂の流れもこちらに寄せる。川岸に波が立つ。立秋で、秋も立つ。「寄せる」と「立つ」の二つの掛け言葉を見事に詠み込みました。即興にもかかわらず、場面にぴったりの出来栄えです。

 「ふむふむ。なるほどなるほど。 立つつながり、寄すつながりというわけか…。でかした貫之! 見事なものじゃ!」

 折からの酔いも手伝って、殿上人たちからやんやの喝采を浴びたのでした。

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 というわけで、この歌を貫之自らが選者をつとめた古今集の、それも秋上の二首目に置いたのは自慢の歌だったからと思われます。あるいは、出世のきっかけになった記念すべき作品なのかもしれません。

 …とはいえ、勝手な鑑賞であることをお断わりしておきます。念のため(笑)

【745】

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