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2013年9月19日 (木曜日)

八月十五日夜禁中独直対月憶元九(白楽天)

 今宵は十五夜です。白楽天の詩を鑑賞します。

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八月十五日夜禁中独直対月憶元九

(はちがつじゅうごにちよる きんちゅうにひとりちょくし つきにたいして げんきゅうをおもう)

銀台金闕夕沈沈(ぎんだい きんけつ ゆうべちんちん)

独宿相思在翰林(どくしゅく あいおもうて かんりんにあり)

三五夜中新月色(さんごやちゅう しんげつのいろ)

二千里外故人心(にせんりがい こじんのこころ)

渚宮東面煙波冷(しょきゅうのとうめんは えんぱひややかに)

浴殿西頭鐘漏深(よくでんのせいとうは しょうろうふかし)

猶恐清光不同見(なおおそる せいこう おなじくはみざらんことを)

江陵卑湿足秋陰(こうりょうは ひしつにして しゅういんおおし)

※元九=作者の親友の元稹。このとき江陵に左遷されていた。

※銀台金闕=宮中の建物群。

※翰林=翰林院(同じく宮中の建物)

※新月=今出たばかりの月。

※故人=昔からの友人。

※渚宮=戦国時代、江陵にあった宮殿。水辺にあった。

※浴殿=宮中の浴堂殿。

意訳:「八月十五日の夜、宮中にひとり宿直(とのい)し、月に相対して親友の元九を思う

 銀色の楼台も金色の宮殿も、日が暮れて静まりかえっている。私はひとり翰林院に宿直して君のことを思っている。三×五(さんご)十五夜、仲秋の名月は今しがた出たばかり。二千里かなたの君はどのような思いで眺めているのだろう。(君のいる)江陵の渚宮の東には、冷やかな霧が覆っているのではないか。(私のいる)宮中の浴殿の西では、水時計の音が心の奥深くまで響いてくる。もしや君は、この清らかな月の光を見ずにいるのではないか。江陵というところは湿気が多くて、秋のこの季節は曇りがちだからな。

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 古来より友達を思う詩としては、最高の作品とされています。

 十五夜の名月の夜。詩人はひとりきり。…このシチュエーションが、読者の情感をそそります。「銀台」と「金闕」、「三五」と「二千」、「中」と「外」、「新月」と「故人」、「色」と「心」、「渚宮」と「浴殿」、「東面」と「西頭」…など、随所にちりばめられた対句が効果的に使われています。対句は読み下したときの語感をよくします。黙読したとき、目でも楽しめます。作者のテクニックの見せどころです。そして、なんといっても親友に対する思いにあふれています。これは理屈では説明しにくいです。

 もう一度声に出して読んでみます。自分が白楽天になったつもりで、情景をイメージしてみてください。唐の時代の長安の都、広大な宮殿、皓皓と光る月、遠く離れた親友…、

ぎんだい きんけつ ゆうべちんちん、

どくしゅく あいおもうて かんりんにあり。

さんごやちゅう しんげつのいろ、

にせんりがい こじんのこころ。

しょきゅうのとうめんは えんぱひややかに、

よくでんのせいとうは しょうろうふかし。

なおおそる せいこう おなじくはみざらんことを、

こうりょうは ひしつにして しゅういんおおし。

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 いいですねぇ。何度も読みあげてみたくなる詩のひとつです。

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【754】

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