はてもなく瀬のなる音や秋黴雨(史邦)
全国的に不安定な空模様の日が続いています。京都も例外ではありません。今日などは午前中は晴れ、午後からは降ったりやんだりで、強く降る時間帯もありました。秋の長雨という言葉もありますが、もはやそんな季節がやってきたのでしょうか?
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芭蕉七部集「猿蓑」より史邦(ふみくに)の句を鑑賞します。
【はてもなく瀬のなる音や秋黴雨リ】(はてもなくせのなるおとやあきついり)
(意訳)川の水かさが増して、瀬の鳴る音が果てしなく続いている…、秋の長雨。
はてもなく…この場合は空間の広さというより、時間の流れを言っているようです。果てもなく流れ行く水、果てもなく鳴り続ける瀬音。変化のない風景の中、時間だけが過ぎていきます。
瀬のなる音や…切れ字「や」を使うことによって、余情を持たせています。川幅や流量を鑑賞する者の想像に任せているわけです。ザーザーか? ゴーゴーか? まさかサラサラではないと思いますけど(笑)
秋黴雨り…“黴(カビ)雨”で、「ついり」また「ばいう」「つゆ」とも読むのだそうです。まさに秋の梅雨です。文字通り長雨でカビが生えることからの熟語でしょうか。いかにもジメジメ感が出ています。
この句、即興に近い自然な言い回しながら、大きな風景を表現できていると思います。けだるい雰囲気もあり、なかなか心に残る一句です。もっとも、大雨&洪水ともなれば、俳句を鑑賞している場合ではないですね。昨今の異常気象が気になります。
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