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2013年9月 8日 (日曜日)

九日龍山飲(李白)

 「重陽の節句」を詠んだ李白の詩を鑑賞します。

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 「九日龍山飲」(九日龍山に飲む)

九日龍山飲(きゅうじつ りょうざんにのむ)

黄花笑逐臣(こうか ちくしんをわらう)

酔看風落帽(よいてはみる かぜのぼうをおとすを) 

舞愛月留人(まいてはあいす つきのひとをとどむるを)

※九日→九月九日。重陽の節句。

※黄花→菊の花。

※逐臣→朝廷を逐われた臣下。李白のこと。

(意訳)九月九日に龍山に登って酒を飲めば、菊の花までが都を逐われた私をあざ笑う。酔っては、風に飛ぶ帽子を見つめ、舞い踊っては、月が人々を(この場所に)とどめるのを愛おしく思う。

 九日龍山飲…日本では、あまりなじみがありませんが、中国では九月九日に、酒肴を持ち、頭に茱萸を挿して小高い山に登り、邪気を祓うのだそうです。「九」は「久」に通じ、おめでたいとも言えます。陽数(奇数)を重ねるので「重陽の節句」です。

 黄花笑逐臣…黄花は菊の花のこと。重陽の節句には菊酒を飲むのだそうです。このとき李白は都を逐われたところだったのでしょう。酒に浮かぶ菊の花びらまでが自分をあざ笑っているかのように見えます。失意の様子です。

 酔看風落帽…三句目には故事があります。その昔、重陽の節句の際、酒宴の途中風に帽子を飛ばされたことに気づかなかった孟嘉(もうか)という人が、同僚に嘲笑されたにもかかわらず見事な受け答えをした、というものです。当時は人前で帽子をとって直接頭を見せることは非礼とされていました。この故事も龍山でのこととされています。

 舞愛月留人…そして人々は酔っぱらって、舞えや踊れの大騒ぎ。まるでお月さまが、いつまでもこの酒宴を続けるように仕向けているかのようです。都を逐われた李白の失意も、どこかに吹き飛んだようです。

 漢詩は故事成語を知らないと、何を言っているのかわからないことも多いです。ただ、この作品などは特にこだわらなくても、単純に、『小高い丘にピクニックに出た→菊酒を飲んだ→帽子を飛ばされた→酔っぱらった→舞い踊った→月を眺めた』 と、場面を想像するだけでも十分に楽しめるのではないかと思います。二句目の「笑逐臣」に、同僚に笑われた孟嘉と今の自分の姿を重ねているのでしょうけれども、決してめげることなく “我が道を行く” 李白の心が伝わります。

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九日 龍山に飲む

黄花 逐臣を笑う

酔うては看る 風の帽を落とすを

舞うては愛す 月の人を留むるを

【743】

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