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2013年10月11日 (金曜日)

秋も秋こよいもこよひ月も月ところもところ見る君も君(よみ人知らず)

 後拾遺和歌集265、よみ人知らず・題知らずの歌を鑑賞します。

秋も秋こよいもこよひ月も月ところもところ見る君も君

(左注) 「或人云、賀陽院にて八月十五日夜月おもしろく侍りけるに、宇治前太政大臣歌よめと侍りければ、覚源法師のよみけると言へり」

※賀陽院(かやのいん)→平安京にあった邸宅のひとつ。南北四町の広大な広さがあった。高陽院とも。

※宇治前太政大臣→藤原頼通(992-1074)。賀陽院を拠点に政治をとった後、宇治に隠棲したのでこの名がある。

※覚源法師→比叡山の僧?

(意訳)八月仲秋、それも十五夜、ごらんのとおり月は名月でございます。場所はここ賀陽院、愛でておられるお方は関白(太政大臣)頼通様。今宵は、まさに申し分なく、最高のお月見でございます。

 藤原頼通といえば、お父さんの道長とともに、摂関政治最盛期の人です。関白の地位に50年近くも居座り続けました。権力のかたまりのような存在です。そういう人物の月見の宴に出席するわけですから、一座の者は皆、頼通の歓心を買うのに躍起になります。まして左注によると、頼道自身が「歌でも詠んでみろ」と言ったというのです。指名されたのか、自ら手を挙げたのかはわかりませんが、覚源法師はここぞとばかりに、声を張り上げました。(『 』は、かくやあらんと思われる頼通のツッコミです)

秋もあき…『ふむ』

今宵もこよい~…『は?』

月もつき…『ほう』

ところもところ~…『なんと?』

見る君もきみ~~…『そうかそうか、ワシのことか。ハハハ…かわいいやつじゃのぅ』

 という感じでしょうか。 「秋」「今宵」「月」「所」と、小気味よい繰り返しが心に残ります。季節、時間、場所と次第に焦点を絞ったすばらしい構成です。そして最後に「見る君も君」ときました。なんと見事なまとめ方でしょう。頼通自身、おべんちゃらとわかっていても全然悪い気はしなかったでしょう。歌としての余韻も満点です。

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 賀陽院は、今の堀川丸太町付近にあったとされています。

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 現在は通行量の多い幹線道路の交差点です。この歌の詠まれたのは千年近く昔のこと。当時を想像させるものは何ひとつありません。

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 と思ったら、近くのマンションの前に、「高陽院邸跡」の表示がありました。「かつてこの地に、華麗な王朝文化が華と咲いた」と。 うれしいじゃないですか! この歌の詠まれた月見の宴が、たしかにここで開かれたのです。私は、それがわかっただけで満足でした(笑)

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