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2013年10月13日 (日曜日)

避乱泛舟江州湖上(足利義昭)

 室町幕府十五代将軍足利義昭の漢詩です。

「避乱泛舟江州湖上」(らんをさけふねをごうしゅうのこじょうにうかぶ)

落魄江湖暗結愁(こうこにらくはくしてあんにうれいをむすぶ)

弧舟一夜思悠悠(こしゅういちやおもいゆうゆう)

天公亦怜吾生否(てんこうまたわがせいをあわれむやいなや)

月白蘆花浅水秋(つきはしろしろかせんすいのあき)

※江州→近江の国(いまの滋賀県)

※落魄→おちぶれること。

※江湖→琵琶湖。

※蘆花→アシの花。

(意訳)落ちぶれて田舎に逃れ、愁いに沈んでいる。一夜琵琶湖に小舟を浮かべるといろいろな思いにおそわれる。天も私の生涯を憐れんでくれているだろうか。月が浅瀬のアシの花を白く照らしている、そんな秋の気配がするのみだ。

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 足利義昭(1537-1597)が漢詩を残していたことは、最近知りました。

 この詩は永禄八年、兄の十四代将軍義輝が暗殺された余波で、近江に逃げた時に作ったものだそうです。武士が詠んだものにしては、軟弱な印象であることはぬぐえません。作品には必ず作者の性格があらわれます。織田信長によって一度は将軍職に据えられたものの、後に追放されてしまうという波乱万丈の生涯を遂げたのも、なんとなくわかるような気がします。

 ただ、詩としては起承転結が鮮明で、余情にすぐれた作品に仕上がっています。さすがに教養の深さを感じます。歴史を知っているわれわれにとっては、室町幕府最後の将軍としてあまり評価のよろしくない人物ですが、こういう作品を見せられると、なんとなく憐れを誘います。今後、歴史小説や時代劇に足利義昭が登場するときは、ちょっと違った目線で見てみようと思います(笑)

【778】

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