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2013年10月 5日 (土曜日)

にごりなく千代をかぞへてすむ水に光をそふる秋夜の月(平兼盛)

 後拾遺和歌集秋上より、平兼盛の歌を鑑賞します。まず前書きがあります。

三条太政大臣、左右をかたわきて、前栽植へ侍りて、歌に心得たるもの十六人を選びて、歌よみ侍りけるに、水上の秋の月といふ心をよみ侍ける。

※三条太政大臣=藤原頼忠。

※左右をかたわきて=左方、右方に分けて。

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 あるとき、三条太政大臣藤原頼忠の家で、歌に心得のある者を十六人集め、左右に分かれての歌合せが催されました。作者の平兼盛は三十六歌仙のひとりです。当然選ばれて出席します。とはいえ彼の官位は従五位上、貴族としては下のほうで、ようやく昇殿が許されるほどの身分でした。大臣の前での歌合せは、自分をアピールする絶好の機会です。歌の技量を認められれば、出世することも夢ではありません。お題は「水上の秋の月」。なんとしても優れた歌を詠み、大臣の目にとまらなければなりません。兼盛はこの日のために何日も前から準備をし、次の歌を詠みました。

にごりなく千代をかぞへてすむ水に光をそふる秋夜の月(後拾遺集251)

(にごりなくちよをかぞえてすむみずにひかりをそうるあきのよのつき)

 この歌、字面だけを解釈すれば、

『濁りなく、末永く澄み続けるこの御殿の池の水面に、光を添える秋の夜の月』

 となって単なる叙景の歌になりますが、「すむ」に大臣の『住む』この御殿と、『澄む』池の水を掛け、「」に文字通り『月の光』と、大臣の『御威光』の意味を掛けてあります。つまり、

『このお住まいの、どこまでも澄んだ水をたたえる池を照らす月の光のように、頼忠様の御威光がいつまでも続きますように!』 

 というのが、裏に込められたメッセージです。もちろん、

『このたびは盛大な歌合せにお呼びいただきありがとうございます。どうぞ今後とも御贔屓のほどよろしくお願いしますm(_ _)m』

 というのが、作者のホンネであるのは言うまでもありません。要するにこの歌、「水上の秋の月といふ心をよみ侍りける」などという体裁のよい言葉が添えられていますけど、三条太政大臣に対する「賀」の歌、すなわちゴマすりです。

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 平兼盛の歌は、百人一首の「しのぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで」がよく知られています。有名な歌人であっても、上司に対するゴマすり・おべんちゃらは欠かせなかったようですね(笑)

(もとより勝手な鑑賞であることをお断りしておきます)

【770】

 

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