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2013年11月 6日 (水曜日)

見一葉落、而知歳之将暮(淮南子)

 一枚の葉っぱが落ちるのを見て年の暮を知る…、このことわざは、『小事をもって大勢を知る』ことのたとえです。中国の古典淮南子(えなんじ)あるこの言葉、原文にあたって鑑賞してみました。

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嘗一臠肉、知一鑊之味、懸羽與炭、而知燥濕之気、以小明大、見一葉落、而知歳之将暮、睹瓶中之冰、而知天下之寒、以近論遠(淮南子、説山訓より)

読み:一臠の肉を嘗(な)めて、一鑊の味を知り、、羽と炭とを懸けて、燥濕の気を知る。小を以て大を明らかにするなり。一葉の落つるを見て、歳の将に暮れなんとするを知り、瓶中の冰を睹て、天下の寒を知る。近きを以て遠きを論ずるなり。

意訳:一切れの肉を嘗めて鍋全体の味を知り、(湿気を吸わない)羽と(湿気を吸う)(の重さの違い)(秤に)懸けて空気中の湿度を知る。(要するに)小さなことから大きなことを明らかにするのである。木の葉が一枚落ちるのを見て、まさにその歳が暮れようとしているのを知り、瓶の水が凍っているのを見て、天下の寒さを知る。(要するに)身近なことで遠くのことを論じているのである。

※臠(レン)=肉塊。

※鑊(カク)=足のない鍋(足のあるのが鼎)

※燥濕(ショウシツ)=乾燥と湿気と。

※瓶中(ヘイチュウ)=水瓶の中。

※冰(コオリ)=氷。

※睹(ミる)=見る。

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 こういうのを大陸的な発想というのでしょうか。たとえ話とはいえ、たとえ方のスケールが大きいです。肉を一切れ食べて、鍋全体の味付けがわかる。一枚の葉が落ちて年の暮がわかる。瓶の水が凍って寒いことがわかる。この3つは、われわれにもまぁ納得できます。ただ、羽(鳥の羽毛?)と炭の重さの違いで湿度がわかる、には、いささか驚きます。炭は湿度が高いと、そんなに水分を吸うものなんでしょうか。まして羽の重さとの違いで湿度を計るには、いったいどれだけの羽量が必要なのかと、つい考え込んでしまいます(笑) 

 淮南子は老荘思想の無為自然を中心に論をすすめていきます。二十一編から成り立っており、この文章の書かれている「説山訓」とは「諸説を山のように集めたもの」という意味だそうです。たとえ話や寓話がこれでもかというくらい続けて出てきます。 

 『見一葉落、而知歳之将暮(一葉の落つるを見て、歳の将に暮れなんとするを知る)』は、『一葉落知天下秋(一葉落ちて天下の秋を知る)』とも言い、わが国ではむしろそのほうが知られています。こうなるとまるで抒情詩の一節になり、秋の寂寥感が前面に出ます。だから、日本人好みなんだろうと思います。

8021(「見一葉落」…百万遍知恩寺にて)

 【802】

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