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2013年11月12日 (火曜日)

思ふことさしてそれとはなきものを秋の夕べを心にぞとふ(宮内卿)

 新古今集より365宮内卿の歌です。

思ふことさしてそれとはなきものを秋の夕べを心にぞとふ

(おもうことさしてそれとはなきものをあきのゆうべをこころにぞとう)

(意訳)物思いをするようなことは、特にないのだけれども、(秋は物思いをするものと決まっているので) 何か物思いにふけるようなことはないものかと、秋の夕暮れの中、心に問うてみる。

 鎌倉時代初めの女流歌人である宮内卿(後鳥羽院宮内卿)は、歌の上手として後鳥羽院に召しだされ、新古今集をはじめとする勅撰集に40首ほど入集しました。残念ながら二十歳前後で亡くなったと伝えられています。理知的な叙景歌を得意とした、と言えばいいのでしょうか。鑑賞する際に、一瞬 「え? この歌どういう意味?」 と考えさせ、二三度読み返しているうちに 「あぁ、そういうことか」 と気づかせる、いわゆる一筋縄ではいかない歌が多いように思います。ある意味疲れるタイプの作風です。ただ、歌の調べがいいので、ついのめり込んでしまう歌人でもあります。

 参考書によると、この歌は、

 『(自分自身)物思いするようなことは特にないけれど、どうして秋の季節はこんなに人を物悲しくさせるのだろうかと、自分の心に尋ねてみる』

 と、秋の夕べの物悲しい雰囲気を歌にしたものとされています。たしかにそういう解釈も考えられます。ただ、二十歳の女性が詠んだ歌にしては、あまりにも観念的で型にハマっており、若さがありません。まるで初老のオジサンの歌のようです。ここは上の意訳のように、

 『今はこれといった悩みもないけれど、秋は物思いの季節って言うじゃない。私も何か心に問うて悩んでみようかしら。そう、おしゃれのことや、好きな男性のタイプなんかを、…ちょっぴり大人になった気分で…ね』

 と解釈したほうが、かわいい女の子らしくておもしろいと思います。御殿の縁先で夕日を浴びてたたずむ宮内卿。秋の夕暮れに溶け込む美少女を想像します(笑)

(勝手な鑑賞であることをお断りしておきます)

【808】

 

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