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2013年11月13日 (水曜日)

秋なれや四条河原の夜更方(団水)

 このおじさん、外出する際には、事前にその場所を詠んだ詩歌を準備して行くように心がけています。もちろんブログネタにするためです。今回は、元禄時代に活躍したという北条団水(ほうじょうだんすい、1663-1711)の句を鑑賞します。

秋なれや四条河原の夜更方】(あきなれやしじょうがわらのよふけがた)

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8091(四条河原)

 四条河原とは、四条あたりを流れる鴨川の河原のことです。京都では有数の夕涼みスポットで、夏には大勢の人でにぎわいます。カップルが等間隔で座って愛を語ることでも有名です。鴨川沿いの納涼床は元禄の頃にもさかんに行われました。芭蕉に「四条の納涼」という一文があります。

 『四条の河原涼みとて、夕月夜の頃より有明過ぐる比まで、川中に床をならべて、夜すがら酒飲み物食ひ遊ぶ。…』

(四条河原の夕涼みと言って、月の出る夕方から夜明けごろまで、河原に床をならべて、一晩中酒を飲み、物を食べて遊ぶ。…)

 表題句の作者団水は芭蕉とほぼ同時代の人ですから、句意は、『そんな四条河原も、秋になって人がいなくなった、夏は夜更けまでにぎやかだったのに』 という意味です。「秋」「四条河原」「夜更方」を、ただ言い捨てたようにならべただけの味気ない句と思われがちですが、あながちそうでもないようです。というのは、先日、四条大橋からひとつ北の三条大橋を渡る機会がありました。

8092(三条大橋にて)

 この季節、夜の鴨川にはうすら寒い川風が吹きます。三条から四条河原に人影は少なく、皓皓と照る月がいかにも寒々と見えます。橋を渡る人々もポケットに手を入れたり、襟を立てたり、あのにぎやかだった夏の景色はいったいどこへいったのかと思います。

 
 橋の中ほどで立ちどまり、この句を口ずさんでいるうちに、「秋」「四条河原」「夜更方」の三つの単語が三位一体の風情を醸し出していることに気づきました。四条河原にたたずむ作者の、ため息、嘆息のようなものが聞こえてくるようです。作句の現場ならではの感動です。

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 北条団水は大坂生まれ、京都にも住んだことがあるとのことです。井原西鶴の門人で二代目西鶴を継ぎました。実際、この句の背景がどういうものかはわかりませんが、三百年後、ひとりのおじさんの心に響いたのは間違いないです。

【809】

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