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2013年11月 7日 (木曜日)

かく恋ひむものと知りせば夕置きて朝は消ぬる露ならましを(作者未詳)

 万葉集巻12から作者未詳です。

かく恋ひむものと知りせば夕置きて朝は消ぬる露にあらましを

(かくこいものとしりせばゆうべおきてあしたはけぬるつゆにあらましを)

意訳:こんなにあの人が恋しいとわかったのなら、(私は)夕方に置いて朝には消えてしまう露になりたい。

ーーーーー

 万葉集巻12「寄物陳思(物に寄せて思いを陳ぶ)」にあるこの歌、題のとおり、自分のせつない恋心を露に託して詠んだものでしょうけど、決してそれだけではないような気がします。

 作者は、『私には夜の時間だけあればいい、昼は必要ない。私は夕方降りて朝には消える夜露になりたいの!』 と言っています。おそらく女性の作品でしょうね。

 あからさまに「好きなあなたと一緒に夜を過ごしたい」と言うのではなく、『夕置きて、朝は消ぬる露ならましを』 と、婉曲に言ったところが歌であり抒情詩です。また、「夕」を「ゆう」ではなく「ゆうべ」と読ませ、「朝」を「あさ」ではなく「あした」と読む。万葉仮名ですから当時はどう読んだのかわかりませんけど、現代語的には、語感の点からもすぐれた対句になっています。そして、古文の常套句「~せば…まし」と、最後の「を」に、深い余情を感じます。

 いいですねぇ。一度でいいからこんな歌を女性から贈られたいものです。このおじさんなら、昼日中からでも飛んでゆきます。すぐに窓を閉め切って部屋を真っ暗にし、ファブリーズをまきながら、「ホラ、夜になったよ。キミの願い通り、露になれただろう」 ってささやきます。

 そのあとは…、想像にお任せします(笑)

(勝手な鑑賞です。念のため)

【803】

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勝手に鑑賞「古今の詩歌」」カテゴリの記事

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