炭うりに鏡見せたる女かな(蕪村)
蕪村句集より。
【炭うりに鏡見せたる女かな】(すみうりにかがみみせたるおんなかな)
(意訳)炭売りがやってきた。顔が真黒だ。おかしくなった女が鏡を持ってきて炭売りに見せ、二人で笑い合った。
登場人物は若い炭売りの男と、下女の二人。場面は大きなお屋敷の勝手口です。炭売りの男はイケメンで、女はそれとなく恋心を抱いていました。ある冬の日、女がワクワクしながら待っていると、大八車に炭を乗せ、男はやってきました。今日に限って真黒な顔をしています。
「いったいどうしたの」、「え? 何が?」、「その顔」
思わず吹き出した女は、鏡を持ってきて男の顔を見せてやります。
「真黒よ」、「さっきまで窯にいたからな」、「いつもはそんな黒くないのに」、「今日は時間がなかったんだ」、「どういうこと?」、「いつもこの屋敷に来るときは顔を洗ってくるんだ」、「あらそうだったの」、「キミに逢えるからね」
このひとことに、女の顔はみるみる赤くなっていきます。二人はともに顔を見合わせて笑うのでした。
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この句、炭のモノクロだけ強調されているのかと思ったら、実は炭売りの黒い顔と、女の赤い顔の二色刷りだったのです。ほのかな恋が成立した瞬間を詠んでいます。
(勝手な鑑賞です。念のため(笑))
【846】
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