行年や氷にのこすもとの水(蕪村)
蕪村の句です。
【行年や氷にのこすもとの水】(ゆくとしやこおりにのこすもとのみず)
(意訳)一年が過ぎ去ろうとしている。時の流れはとどまることを知らない。でも、川も氷れば元の水が残るように、その時々の思い出は心に残すことができる。
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「もとの水」は『方丈記』の冒頭部分からの転用です。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし…」
絶え間なく流れる川には元の水がとどまることはなく、常に新しい水と入れ替わっている。同じように時間の流れも止まることがないという、世の無常を言った有名なフレーズで、それを踏まえた蕪村のひとりごとのような句です。
『だけど、ちょっと待てよ。冬の寒い季節には、川も凍結することがある。水も、凍ればいつまでも元の水のままだ。時間の流れにしても思い出となれば、いつまでも心にとどめることができるではないか。思い出は大切にしたいものだ』
結局、水と氷の関係を時間と思い出の関係に結び付けた、穿ちの句でなんでしょうけど、「行年」の季節感とよくマッチしています。中七を「氷に残る」ではなく「氷に残す」としたところに、蕪村の決意があります。来たるべき新年への期待感もあるでしょう。方丈記を換骨奪胎した、蕪村のお手柄の一句だと思います。
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