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2013年12月19日 (木曜日)

冬籠り虫けらまでもあなかしこ(貞徳)

 松永貞徳の句です。

冬籠り虫けらまでもあなかしこ】(ふゆごもりむしけらまでもあなかしこ)

(意訳)人々が閉じこもって外出しなくなる冬の季節。虫けらまでもが「あなかしこ」とばかりに、地上に別れを告げて“穴”(あな)に“畏”(かしこ)まっている。

 「あなかしこ」の「あな」は、『ああ』とか『あれ』『まあ』という感動詞です。「かしこ(畏)」は『恐れ多い』、『もったいない』の意です。直訳すれば『ああ恐れ多い』、『まあもったいない』ですが、実際はもっと軽い意味合いで、女性の手紙の結びに置く常套句になっています。現代ならばEメールの「ではまた」とか「じゃあね」というところでしょうか。

 一句は、そんな「あなかしこ」と虫の籠る「穴」を掛けています。人は冬ごもりのあいさつ文の末尾に「あなかしこ」と書くけれども、虫けらも穴で畏まっているよ、というわけです。「虫けら」「あなかしこ」という一見何の関係もない言葉を、季語の「冬籠り」でうまくつなげたところが、作者貞徳のお手柄ということでしょう。サラリーマン川柳に入選しそうな穿ちの句です。

【845】

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