尻もちもつきてよろこぶ歳暮哉(貞徳)
江戸時代初期の俳諧集「犬子集」より、松永貞徳の句です。
【尻もちもつきてよろこぶ歳暮哉】(しりもちもつきてよろこぶせいぼかな)
(意訳)歳の暮に転んで尻もちをついてしまった。これも「餅つき」には違いない。正月前の縁起のよい出来事として喜んでおこう。
貞門俳諧らしい言葉遊びの句です。歳末の餅つきと、尻もちを掛けています。この句の眼目は「よろこぶ」にあります。というか、貞徳翁は「よろこぶ」ではなく「よころぶ」と置きたかったはずです。初句に尻もち“も”とあるからには、この句、実際に餅つきをしている際に詠んだものと思われます。作句の場面を勝手に想像してみました。
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貞徳一門の歳末恒例、餅つき大会でのこと。若い衆が杵を振り上げた時、あやまってスッテンコロリンと転んでしまいました。
「どうしたんや、勢い余って尻もちかいな。かまへんかまへん。餅つきに、さらにツキが増えたということや。この際、尻でもなんでもついたらええ。一句できた! 『尻もちもつきてよころぶ歳暮哉』 はどうや。…え? あかんか。よころぶ(よぅ転ぶ)では縁起悪いか。それもそうやな、そしたら「喜ぶ」にしたらどうや。『尻もちもつきてよろこぶ歳暮哉』 ハハハ、これやったらええやろ。いずれにしてもめでたい、一門の皆は来年も転ばんように頼むでぇ。ハハハハ…」
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というノリではないかと思うのですが、いくらなんでも想像が過ぎたかな?
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