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2013年12月15日 (日曜日)

井のもとへ薄刃を落す寒さ哉(蕪村)

 蕪村の句です。

井のもとへ薄刃を落す寒さ哉】(いのもとへうすばをおとすさむさかな)

(意訳)井戸端に刃物を落としてしまった。ヒヤッとして、寒中、さらに寒気が走った。

※薄刃=薄刃包丁。

 「井のもと」は井戸端。蕪村のころ、井戸は水を汲むだけでなく、食材の準備や洗い物を井戸端で行いました。朝夕の食事時には、住人たちで混雑します。そんなとき、ちょっとした不注意から、調理に使っていた切れ味鋭い薄刃包丁を落としてしまいました。自分の足元か他人の足元か、ヒヤッと背筋に寒気が走ります。今回はなんとか事なきを得ましたが、ひとつ間違えば大けがをするところでした。

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 現役の井戸にお目にかからなくなって久しい現代人には、描写されている場面がわかりにくいと思います。「寒さ」に、井戸水の冷たさと、薄刃包丁の冷たさと、背筋の冷たさと、冬の冷たさと、幾重もの意味が掛けられています。江戸時代、井戸は町内の共有でした。人々は自然と井戸端に集まるようになり、いわゆる井戸端会議なるものも生まれます。向こう三軒両隣、近所づきあい華やかなりし時代の作品です。

【841】

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