偶成(木戸孝允)
幕末から明治にかけての政治家木戸孝允の漢詩です。
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『偶成』
才子恃才愚守愚(さいしはさいをたのみ ぐはぐをまもる)
少年才子不如愚(しょうねんのさいし ぐにしかず)
請看他日業成後(こう みよたじつぎょうなるののち)
才子不才愚不愚(さいしはさいならず ぐはぐならず)
(意訳)才子は自らの才を過信して努力を怠るが、愚者はおのれの愚かさを知って人一倍努力する。少年時代は、才子よりもむしろ愚鈍なほうがよいのだ。他日事業を成し遂げた後を見よ。少年時代に才子と言われた者が実は才子ではなく、愚かに見えた者が実は愚かではなかったことに気づくであろう。
※才子=頭がよく気のきいている人。
※恃む=頼る。誇りとする。
※守愚=愚かなりに努力する。かしこぶらない。
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この詩、「愚」を反復して韻を踏んでいるのが特徴的で、意味もとりやすく印象深い作品だと思います。
「十で神童、十五で秀才、二十歳過ぎたらただの人」というように、いくら能力があっても、人生の設計図ともいうべき『志』と、それに向かっての日々の『努力』がないと大成しないということです。西郷隆盛、大久保利通とともに、明治維新の三傑といわれる木戸孝允の作だけに、重みを持ってわれわれに訴えかけてきます。若人に贈りたい詩のひとつです。
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