ちはやぶる平野の松の枝繁み千代も八千代も色は変らじ(大中臣能宣)
拾遺集巻五「賀」264、大中臣能宣の歌です。
「はじめて平野祭に男使立てし時、うたふべき歌詠ませしに」
【ちはやぶる平野の松の枝繁み千代も八千代も色は変らじ】
(意訳)平野神社の松は枝が繁っているので、千代も八千代も色が変わることはないであろう。
※ちはやぶる=「神」などにかかる枕詞。(この場合は「平野(神社)」にかかる)
松は長寿の象徴です。常緑の松に永遠の繁栄を寿いだおめでたい歌です。大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ、921-991)は平安時代中期の歌人。梨壺の五人のひとりとして後撰集の編纂にあたった人物として知られています。大中臣家は、代々神祇官として朝廷の祭祀をつかさどってきました。その関係から、平野神社をたたえる歌を詠んだものと思われます。
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先日、平野神社を参拝する機会がありました。
北野白梅町を上がったところ、西大路通りに面しています。
平野神社といえば京都でも有数の桜の名所ですが、冬のこの季節は枯木状態です。
と思ったら、一部寒桜が咲いていました。「十月桜」というのだそうです。いささか驚きました。
で、表題歌に歌われた「ちはやぶる平野の松」は、今もあるのでしょうか? 探してみました。
本殿前に見つけました。境内の松はどうやらこの一本だけのようです。
一本だけとはいえ「枝繁み」です。「千代も八千代も色は変らじ」…、大中臣能宣の時代から約千年。拾遺集の歌のために一木だけ残してあるのか、それともただの偶然か。私は、枝ぶりを下から眺めつつ、しばらく王朝時代に思いを馳せておりました。
『ちはやぶる ひらののまつの えだしげみ ちよもやちよも いろはかわらじ』
桜の名所の平野神社にて、松の木に感激するおじさんでした(笑)
【868】
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