心こめて筆試ることしかな(白雄)
江戸中期の俳人加舎白雄の句です。
「法華書写思たちし年の旦」
【心こめて筆試ることしかな】(こころこめてふでこころみることしかな)
意訳:(法華経の写経を思い立った年の元旦)この写経を今年の書き初めとして、心をこめることにしよう。
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新年にあたって新しい筆を手に取ったのでしょうか。句意は明白で、快い調べが印象的です。「初詣」、「初夢」、「初売」、「初荷」、そして「書き初め」と、何事にも「初」の字がついて、否応なしに心のこもるお正月です。
この句、年頭に写経を思い立った際、さりげなく添えて詠んだ如くにみえますが、実は心をこめたのは筆でなく、むしろこの句のほうかもしれません。それは、「こころこめて」「こころみる」と、「こころ」が二度詠み込まれていること、さらに
『kokorokomete fudekokoromiru kotosikana』
と、全体に「O」音を多用して調子を整えているところにあらわれています。天賦の才にて自然と頭に浮かんだのか、それとも推敲を重ねたのか、いかにも白雄らしいさわやかな歳旦吟です。
【862】
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