青天に雪の遠山見へにけり(井上士朗)
江戸時代中期の俳人、井上士朗の句です(枇杷園句集より)
【青天に雪の遠山見へにけり】(せいてんにゆきのとおやまみえにけり)
(意訳)よく晴れた冬の日、青空の向こうに雪を頂いた山々が見え、その美しさに感動した。
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井上士朗(1742-1812)は尾張の生まれ。名古屋で医業を営みながら国学・漢学・絵画などを嗜みました。京都にも縁があり、蕪村とも交流があったそうです。全体に平明でこじんまりとした句を詠みますが、表題句は大きな風景を詠んだ佳句と言ってよいと思います。
初句の「青天」は、「青天の霹靂(予想もしなかった出来事が起こること)」を連想させ、文字通り作者の感動をあらわしています。意訳すればなんでもなくなってしまいますが、結句で「見へにけり」と断定したのも効果的です。虚子の「遠山に日の当たりたる枯野かな」、草田男の「秋の航一大紺円盤の中」と同じような心象風景が読みとれます。近代俳句を思わせる洗練された趣を感じます。
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