凩やひたとつまづくもどり馬(蕪村)
蕪村の句です。
【凩やひたとつまづくもどり馬】(こがらしやひたとつまづくもどりうま)
(意訳)木枯らしの中、荷物を運び終えて帰途につく馬が、ふと躓いた。ハッとして、周囲の人々に緊張が走る!
ーーーーー
「木枯らし」がヒューッと吹いて顔をそむけた瞬間、引いている馬の足元がよろけました。何かに蹴躓いたのでしょうか。馬子に緊張が走ります。大柄な荷馬が、あわや倒れるのではないか! という決定的瞬間をとらえた写真のような句です。
「ひたと(直と)」は、『突然』・『思いがけず』という意味で、ニュアンスとしては、「あー、びっくりしたー」という声を含んでいます。「もどり馬」も効果的で、馬の疲れと馬子の疲れが、木枯らしの寂寥感と相まって、緊張感のある句に仕立てています。言葉に無駄のない、蕪村ならではの表現力です。
【871】
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