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2014年1月21日 (火曜日)

雪降れば冬ごもりせる草も木も春に知られぬ花ぞ咲きける(紀貫之)

 古今集巻六冬歌より紀貫之の歌です。

「冬の歌とてよめる」

雪降れば冬ごもりせる草も木も春に知られぬ花ぞ咲きける

(ゆきふればふゆごもりせるくさもきもはるにしられぬはなぞさきける)

意訳:雪が降れば、冬ごもりしている草にも木にも、春には知ることのできない花が咲いたようだ。

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 わかりやすい歌で、言われてみれば確かにそのとおりです。私も始めは、「なるほど!うまく詠んだものだ」と思ったものです。でも、しばらく反芻しているうちに、余情に欠ける歌であることに気がつきました。実はこの歌、五七五七七の三十一文字すべてを使って、単に自分の言いたいことを説明しているに過ぎません。草木に降り積もる雪を花に見立てたのは、作者にとって新しい美の発見だったかもしれませんが、古今集の限界を感じる歌のひとつです。同じ古今集冬の部には、紀友則の歌

「雪のふりけるを見てよめる」

雪降れば木毎に花ぞ咲きにけるいづれを梅と分きて折らまし

(ゆきふればきごとにはなぞさきにけるいづれをうめとわきておらまし)

意訳:雪が降ればそれぞれの木に花が咲くことだ。いったいどれを梅の花と区別して折ればいいだろう。

 があり、ほぼ同想です。ただ、こちらの歌は「木」「毎」の字を足せば「梅」になるという、シャレを含んでいるぶんだけよくできています。笑えます。

【878】

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