夜ふるをしらぬは雪やねいりばな(犬子集・作者未詳)
今朝、目覚めると雪が積もっていました。こういう日にブログネタにする詩歌はないかと探してみたところ、万葉集に作者未詳の歌を見つけました。
2318【夜を寒み朝戸を開き出で見れば庭もはだらにみ雪降りたり】
(よをさむみあさとをひらきいでみればにわもはだらにみゆきふりたり)
意訳:寒い夜だったなぁと思って、朝、戸をあけて出てみると、庭にまだらに雪が積もっていた。
あまりに寒い夜だったので、朝になって外に出て見ればうっすらと雪が積もっていて驚いた、というのですね。雪に「み(御)」をつけているのは、調子を整える意味もあるでしょうが、自然に対する驚異(もしくは脅威)の念をあらわしていると思われます。叙景歌ながら、作者の感動を含んだいい歌だと思います。ただ、表現が素朴過ぎて、イマイチおもしろくありません。
どうも満足できず、さらにいくつかの本をあたってみると、江戸時代初期の俳諧集「犬子集」に、同じく作者未詳の句をみつけました。
【夜ふるをしらぬは雪やねいりばな】(よるふるをしらぬはゆきやねいりばな)
意訳:『へぇ~、知らなんだなぁ。夜に降ってたんやなぁ。一面に積もって、雪の花っちゅうのはこのことや。夕べ、寝る前には降ってなかったから、寝入りばなから降ったんやろなぁ。“ゆきのはな”と“ねいりばな” で、“はな(花)”つながりか。ハハハおもろいおもろい、一句出来た!』
…というわけで、当ブログには万葉集よりも犬子集のほうが合っていると感じた、そんな雪の朝でした(笑)
【867】
« 年月はあらたあらたに相見れど吾思ふ君は飽き足らぬかも(大伴村上) | トップページ | ちはやぶる平野の松の枝繁み千代も八千代も色は変らじ(大中臣能宣) »
「 勝手に鑑賞「古今の詩歌」」カテゴリの記事
- 夏風邪はなかなか老に重かりき(虚子)(2014.05.21)
- 後夜聞仏法僧鳥(空海)(2014.05.20)
- 夏といへばまづ心にやかけつはた(毛吹草)(2014.05.19)
- 絵師も此匂ひはいかでかきつばた(良徳)(2014.05.18)
- 神山やおほたの沢の杜若ふかきたのみは色にみゆらむ(藤原俊成)(2014.05.17)
« 年月はあらたあらたに相見れど吾思ふ君は飽き足らぬかも(大伴村上) | トップページ | ちはやぶる平野の松の枝繁み千代も八千代も色は変らじ(大中臣能宣) »
コメント