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2014年2月27日 (木曜日)

いかでわれ無漏の国にも生まれ来で有為の苦または受けつくすらむ(兼好法師)

 徒然草の作者、兼好法師(吉田兼好)の歌です。

いかでわれ無漏の国にも生まれ来で有為の苦または受けつくすらむ

※無漏の国=「漏」は煩悩の意。煩悩のない国、すなわち極楽浄土のこと。

※有為の苦=因縁によって起こる苦悩。すなわちこの世の苦しみのこと。

(意訳)どうして私は煩悩のない極楽浄土に生まれて来ないで、またもやこの世に生まれ、有為の苦しみを受けつくすのでしょう。

 この世のすべてのものは、六道(地獄道・餓鬼道・修羅道・畜生道・人間道・天道)の間を生まれ変わり、さまよい続けるという、いわゆる「六道輪廻」から自分も抜けられないでいることを言っています。兼好法師は神官の家系に生まれながら、三十歳前後で出家しました。無常の現世を厭う、兼好法師ならではの歌です。こういう心の裏打ちがあればこそ、有名な徒然草を書き残すことができたのです。さすが見事な叙情歌だと感激していたら、この歌には詞書があることに気がつきました。それは

こでうゐのくまといふことを隠して

 というものです。

 実は、この歌にはお題が隠されていました。“こでうゐのくま”です。どこに隠してあるのでしょう? 今度はかな文字で記してみます。

【いかでわれむろのくににもうまれこでうゐのくまたはうけつくすらむ】

 たしかに下線部分に“こでうゐのくま”があります。まさかこんなところに入っているとは驚きです。たいしたもんです。……でも、“こでうゐのくま”って、何のこと?

 参考書にあたってみたところ、「五条猪熊」とありました。 え? 五条猪熊? あの五条通と猪熊通の交差点のこと? 参考書にはこうも書いてありました。「隠し題は物名歌とも言い、歌の主旨に関係なく物の名前などを詠み込む座興のようなもの」

 な~んだ。要するに、言葉遊びの技量を競い合う知的ゲームです。よくぞこんなところに詠み込んだものだと仲間内で笑い合うわけで、はじめに「こでうゐのくま」の題があって、一首が成り立っているのです。歌意にどれだけ真実味があるかわかったものではありません。後世のわれわれにしてみれば興ざめです。真剣に解釈したことが、今となっては損した気分です。

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↑ちなみに、現在の五条猪熊はこんなところです。

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 五条通は、片側4車線の京都でも有数の幹線道路です。車がびゅんびゅん走っています。いったい何がおもしろくて五条猪熊を詠み込んだのかはわかりませんが、行ってみて感じたのは、兼好法師のころは、いったいどんな風景だったのだろうということです。写真を撮りながら、別の意味で感動しておりました(笑)

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【915】

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