冬の夜の雪と月とを見るほどに花のときさへ面影ぞ立つ(藤原俊成)
立春を迎えたというのに、今冬一番の寒波の襲来です。今回は藤原俊成の私家集「長秋詠藻」より一首鑑賞します。
【冬の夜の雪と月とを見るほどに花のときさへ面影ぞ立つ】
(ふゆのよのゆきとつきとをみるほどにはなのときさえおもかげぞたつ)
(意訳)冬の夜、降る雪とその合間に照らす月を見ていると、花咲く春の面影が彷彿として目の前に浮かんできた。
厳冬。夜に降る雪と、積もった雪を照らす極寒の月。
そんな状況にもかかわらず、眼前には花咲く春の風景が浮かぶというのです。矛盾に満ちたいかにも逆説的な歌ながら、決して降る雪が散る花のように見えるということだけではありません。「谷深ければ山高し」、冬の間寒ければ寒いほど春を迎える喜びは大きくなります。極寒に耐えれば耐えるほど、来るべき春への期待は増幅するのです。
眼目は「雪」「月」「とき(時)」という連続する「ki」音でしょうか。調べのよさがほどよい緊張感をもたらして、歌全体を引き締めています。五句「面影ぞ立つ」で、花の面影が眼前にあらわれたのは、たしかに作者の機知の働きに違いないでしょうが、発想のユニークさには感嘆します。俊成の非凡な想像力なればこそです。
(もとより勝手な鑑賞です。念のため)
【893】
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