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2014年2月24日 (月曜日)

比叡山に登るとき、弁当に「魚」を入れるのは禁物?

 図書館で見つけた「元禄世間咄風聞集」という本に、比叡山登山についての興味深い話を見つけました。簡単に意訳してみます。「元禄世間咄風聞集」は元禄七年~十六年の間の江戸の世間話、噂話を書きとめたもので、次の話は元禄十年(1697年)のものらしいです。

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 【松平伊予守様御家来、ゑいざん見物に成ほど晴天に参候処に、にわかにそらかきくもり、らいでんいたし、何とものぼられ不申候ゆへ、本のごとくかゑり、茶やに立寄右之趣はなし、「如何様成事にて左様に有之候や。爰元に参候て見候へば、段々晴天に成候」由申候。茶やのていしゆ申候は、「弁当に魚るいは御入不被成候や」と申候。「見物一ぺんにて候故、成ほど魚るい弁当に入候」よし申候。「それゆへ左様に可有之候。重ては魚るい御入被成間敷」由申候。其日は晩方に成申候に付、翌日精進けつさいにて参候へば、何の事も無之候由。右は山城守様御咄被成候由。 (「元禄世間咄風聞集」(岩波文庫)より引用、p108-109)】

(意訳)松平伊予守様の御家来が比叡山見物に行ったところ、たしかに晴天の日だったのに、突然空が暗くなり、雷が鳴って、どうしても登ることができなくなった。仕方なく元へ戻って、茶屋に立ち寄ったところ、そのような悪天候はおさまった。

 「いったいどうしてこのようなことがあるのか。ここへ来てみれば、晴れているではないか」

 と尋ねると、茶屋の主人は、

 「お弁当に魚をお入れになったのではありませんか」

 と言った。

 「いかにも。比叡山へは物見遊山なので、たしかに魚を弁当に入れていた」

 「だから、そのような悪天候になったのです。今度は魚をお入れにならぬように」

 とのこと。

 その日は、夜になったので、翌日、魚はやめた上に身を清めてもう一度登れば、何事も無く登れたという。以上の話は、山城守様がお話になったとのことである。

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 えーっ! なんと、比叡山に登る際には、魚を弁当に入れてはいけないというのです。さもないと「にわかに空かき曇り、雷電いたし…」とあります。古来より比叡山は、平安京の王城鎮護、仏法の聖地なので、肉や魚などの生臭物は一切ダメということでしょうか。それとも魚だけがだめなのでしょうか。 そういえば一昨年の夏に孫を連れて車で行った際、山頂駐車場横の売店で「カレーうどん」と「かき氷」を食べた記憶があります。あの日は雷が鳴ることもなく、終日晴天でした。めちゃくちゃ暑い日だったのを覚えています。う~ん、もしやカレーうどんには肉は入ってなかったのか…。他に魚を使ったメニューはなかったのか…。三百年余り昔の、それも噂話とはいえ、真偽のほどをたしかめてみる必要がありそうです。

 そうですね。機会があれば、今度は弁当持参で行ってみたいと思います。この際、シャケ弁当と焼肉弁当でチャレンジしてみようかな。

9121_2 (好天の日の比叡山)

【912】

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