笹の葉におく霜よりもひとり寝る我が衣手ぞさえまさりける(紀友則)
古今集巻十二(恋歌二)より、紀友則の歌を鑑賞します。
【笹の葉におく霜よりもひとり寝るわが衣手ぞさえまさりける】
(ささのはにおくしもよりもひとりぬるわがころもでぞさえまさりける)
(意訳)笹の葉に置いた霜の冷たさよりも、独り寝の私の袖のほうが、よほど冷たく冴えている。
霜が降りて寒い朝よりも、自分の袖ほうがよほど冷たく冴えわたっている。恋しい人に会えなくて一晩中涙にくれ、着物の袖を濡らしているから、というのです。恋人に冷たくされ、途方にくれているのでしょうか、あるいは一方的な片思いでしょうか、そこのところはわかりませんけど、歌意はとりやすいです。陰鬱とした調べは、作者の悲しみを表現しています。ただ、調べはよくてもあまりにも観念的で、歌としてはつまらないです。“たおやめぶり”の古今集の悪い所、退屈な部分が出ています。
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さて、全国的な大寒波の中、京都にも雪が降り、自宅近くの笹の葉に(霜ではなく)雪が積もりました。そして、雪の冷たさ以上に、このおじさんは凍えていました。もっとも、それは袖ではなく懐具合ですけど。さらに寝不足もあって、今朝は「さえまさる」というよりも「さえません」でした。…まぁそれだけのことです。
【897】
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