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2014年2月13日 (木曜日)

とめこかし梅さかりなるわが宿を疎きも人はをりにこそよれ(西行)

 新古今集春歌上、西行の歌です。

「題しらず」

とめこかし梅さかりなるわが宿を疎きも人はをりにこそよれ

(とめこかしうめさかりなるわがやどをうときもひとはおりにこそよれ)

意訳:尋ねて来てよ! 梅の花が盛りの私の家に。日ごろ疎遠にしている人でも、こういうときには折りをみて立ち寄るものだよ。

 ※「とめこかし」→尋め来(尋ね求めて来る)+かし(相手に言いかけて確認したり、強調する終助詞。~してください。~だね)=『ともあれ尋ねて来てください』の意。

ーーーーー

 この歌の西行は、久しぶりにだれかと出会ったのですね。相手は自分より目下か同僚か、古くからの友人のようです。歌の眼目は「とめこかし」です。たった五文字に、興奮状態の西行の心の内を読みとることができます。 

 『うわー、久しぶりだなぁ。何年振り? いや、何十年振りか? まさかここで出会うとは思わなかったなぁ。どうだい、元気にしているかい。今どこに居るんだい? そうか! それならわが家の近くじゃないか。今度尋ねて来てよ』

 ただし、相手はいささか渋ったようです。忙しいとかなんとか…。

 『え? 忙しい? 水臭いなぁ。忙しいのはオレも同じさ。そんなこと言わずに、ともかく一度来てよ。わが家の梅の花が、ちょうど盛りを迎えているんだ。梅とともに、積もる話にも花を咲かせようじゃないか。長い間音信不通だったのだから、折りを見てぜひとも寄ってくれよ!』

 現代でいえば学生時代の同窓会ですね。同級生の半分、いや三分の一程度しか集まらない。昔懐かしいのだけれども、今の生活のしがらみから出席できない。昔のようなわけにはいかないと二の足を踏んでしまうのは、西行の時代も同じだったかもしれません。

 それにしても、旧友に出会ってハイテンションの西行、満面笑顔の西行の姿が目に浮かびます。「とめこかし」…言い方が素敵です。初句に持ってきたことで、作者の主張がより強調されています。西行と言えば、桜を詠んだ歌ばかりが有名ですが、梅の歌にもいいのがあることを知りました。

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(参考:小学館「全訳古語例解辞典」。勝手な鑑賞であることをお断りしておきます)

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