富士の山夢に見るこそ果報なれ路銀もいらず草臥もせず(永田貞柳)
江戸時代の狂歌師永田貞柳の狂歌です。
【富士の山夢に見るこそ果報なれ路銀もいらず草臥もせず】
(ふじのやまゆめにみるこそかほうなれろぎんもいらずくたびれもせず)
(意訳)富士山は夢で見るのが、幸せ者ってことだ。旅費も要らず、疲れることもないからなぁ。
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詞書に「初夢」とあります。富士山は日本第一の山だけど、実際問題、行くとなれば旅費も要るし疲れることこのうえない。だからこそ夢に見るのが果報者だ。「一富士二鷹三茄子」とはよく言ったものだ、というのです。滑稽と穿ちを兼ねた上に調べもよく、狂歌と呼ぶにふさわしい作品です。
作者の永田貞柳(ながたていりゅう、1654-1734)は、大阪生まれの狂歌師。代々菓子商を営み、「鯛屋(たいや)」と称しておりました。機知に富んだわかりやすい狂歌を多く残しています。弟子も多数いたらしく、狂歌中興の人とも言われています。
江戸時代には、夢に見ることがおめでたいことの筆頭に挙げられた富士山も、現代は写真で簡単に見ることができます。もちろん旅費は要りません、疲れることもありません。貞柳の時代からは、世の中便利になりました。昔も今も変わらないのは、富士山の美しい姿だけです(笑)
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