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2014年3月19日 (水曜日)

ささやかば曇りもぞする春の月(成美)

 夏目成美の家集から、一句鑑賞します。

ささやかば曇りもぞする春の月】(ささやかばくもりもぞするはるのつき)

(意訳)春の夜だというのに、今宵は月がはっきり見えている。こういうときは、小声でささやきあえば、雲ってくださるだろうよ。

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 新古今集春歌上、大江千里の歌、「照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき」を踏まえています。春の月といえばおぼろ月と決まっているのに、今夜は月が冴えている。しかし、月にささやけば曇ることもあるだろう、というのです。

 では、いったい何を「ささやかば」というのでしょうか? それはお月さまへの呼びかけではなく、たぶん男女の愛のささやきを言っているのでしょう。生き物にとって春は恋の季節。人間の世界も同じで、明るい月夜では差しさわりがあります。ぼんやりと曇っていてこそ愛の交歓にはふさわしいわけです。だから、男女がささやきあえば、お月さまも気を利かして曇ってくれるのです。

 江戸中期~後期の俳人夏目成美(なつめせいび、1749-1816)は、富裕な札差(金融業者)でした。若い時に痛風で足が不自由だったと伝えられますが、なかなかなまめかしい、粋な句を詠むものです。

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