君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る(紀友則)
古今集春歌上より、紀友則の歌です。
「梅の花を折りて人に贈りける」
【君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る】
(きみならでだれにかみせんうめのはないろをもかをもしるひとぞしる)
意訳:(梅の花を折って人に贈ったときに添えた歌)君でなくて、いったい誰に見せるというのか。この梅の花の色も香りも、理解できるのは君だけなのだから。
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室町時代の注釈書である「古今抄延五記」には、「人のもとへ梅をつかはすとて、その人をほめたるなり」と説明されています。まさにそのとおりで、形式的には折りとった梅があまりに美しいので人に贈ったことになっていますが、実際は、相手の審美眼をホメるためにわざわざ梅を届けています。梅の花はダシに使われているわけで、心憎い演出です。「知る人ぞ知る」なんておだてられた相手は、悪い気はしなかったでしょう。リズムがよくて、おしゃれな歌です。
ただし、詞書にある「梅の花を折りて人に贈りける」はいただけませんね。自然保護の観点から、現代人は真似しないようにしたいものです(笑)
【923】
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コメント
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>自然保護の観点から
「桜折るバカ梅折らぬバカ」と言いましてね、桜の枝は折るとそこから腐りますが、梅は折ってもより丈夫になるんですよ。
投稿: | 2015年3月27日 (金曜日) 00時09分