文を好むきてんはたらく匂ひかな(惟中)
江戸時代前期の俳人、岡西惟中(おかにしいちゅう、1639-1711)の句です。
【文を好むきてんはたらく匂ひかな】(ふみをこのむきてんはたらくにおいかな)
(意訳)梅の木は学問を好むので、「好文木」とも言われるらしい。それで機転が利いて周囲に匂いを送っているのだな。
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一見わかりにくいこの句の季語は「文を好む木」で梅のことです。どういうことかというと、晋の起居注(※)という書物に、『昔、晋の武帝が学問に励むと梅が花を開き、学問を怠けると花を開かなかった』とあります。梅は学問を好むとされ、別名「好文木」とも呼ばれます。梅が学問好きならばきっと機転も利くはずで、梅のいい香りは、周囲に対する梅自身の心配り、機転を利かせているから、というのですね。「ふみをこのむき(文を好む木)」と「きてんはたらく(機転働く)」の「き」つながりに掛けているところが眼目です。
なるほどねぇ…。でも、一番機転が利くのは、こういう句を詠む惟中さん自身かな(笑)
※起居注(ききょちゅう)=皇帝の日々の言動を記録した書物。
【921】
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