いきもどり見る山吹や鋸葉(重頼)
江戸時代はじめの俳諧集、「犬子(えのこ)集」巻二より重頼の句です。
【いきもどり見る山吹や鋸葉】(いきもどりみるやまぶきやのこぎりば)
(意訳)行き帰りのたびに見る山吹は鋸のような葉(刃)を持っている…、なるほど! 道理で私も行ったり来たりするはずだ。
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どんな用事があったのかはわかりませんが、作者の重頼は同じ道を何度も往復しています。季節は春の盛り。道端には山吹の花が咲き乱れていました。緑と黄色のあざやかな風景が重頼の目に入ります。山吹といえば、特徴的なのが葉のギザギザです。彼は瞬間的にダジャレを思いつきます。
『山吹の「葉」にノコギリの「刃」。ノコギリは引いたり押したり(行きつ戻りつ)。山吹を見る私も、前を行ったり来たり(行きつ戻りつ)か。なるほど、これは道理というものだ』
とまぁ、こんな感じでしょうか。この句、一読したとき私には何を言ってるのかわからなくて、『いきもどり みるやまぶきや のこぎりば』 はて? どういうこと? と悩んでしまいました。ただ、それもほんの一瞬で、次の瞬間には 『あ! わかったー。そういうことかぁ。』 と気づいた次第です(笑) 鑑賞するにあたっては、『今ならただのおやじギャグだな』 などと思わず、単純に笑っておくのがいいようです。
参考:岩波書店刊「初期俳諧集(新日本古典文学大系)」
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