雀巣くふ石の華表や春の風(漱石)
夏目漱石の句です。
【雀巣くふ石の華表や春の風】(すずめすくう いしのかひょうや はるのかぜ)
(意訳)雀が巣を作っている石の“華表”に春の風が渡っている。
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明治40年4月2日の日記に「○北野天神」として、この句があります。この年の3月28日から4月11日まで、漱石は生涯二度目の京都旅行をしています。朝日新聞に「虞美人草」を連載するためだったそうで、日記によると4月2日(火)に漱石は、夷川~堀川~北野天満宮~金閣寺~大徳寺と見てまわっています。この句は、北野天満宮の境内に雀がたむろしている情景を詠んだものです。季語を「春の風」と置いたのは、京都へ来てから数日間、肌寒い日が続いていたのが、ようやく暖かくなったためと思われます。同じ日の日記に「天晴始めて春の心地なり」とあります。
わからないのは「華表」です。聞いたことのない言葉で、漢和辞典を引いてみれば、
【華表(かひょう)】=①墓やお堂の入口の石柱。②鳥居。
とありました(新明解漢和辞典) 「北野天神」だからここは「鳥居」の意味で間違いないなぁ…と、ここまで考えて、私はハタとこの句の背景に思い当たりました。もしや、北野天神の参道を歩く漱石は雀を見つけ、「あ、鳥が居る!」と叫んだのではないか、と。
「え? どこに?」
「トリイに」
というわけです(笑) なんのことはない、一句に仕立てて日記に記す際、『鳥(トリ)巣食ふ石の鳥居や春の風』では、あまりにミエミエなので、わざと「雀」「華表」と置いたわけですね。
もちろん勝手な解釈・鑑賞ですけど、あながち間違ってないかもしれないと、ひとり納得してしまいました。それにしても「華表」などという難しい漢語を使うところが、さすがに漱石、まさに文豪です。
(北野天満宮の鳥居)
【956】
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