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2014年4月10日 (木曜日)

さくら花ちりぬる風のなごりには水なき空に浪ぞたちける(貫之)

 古今集春歌下より、紀貫之の歌です。

「亭子院歌合の歌」

さくら花ちりぬる風のなごりには水なき空に浪ぞたちける

(意訳)桜の花びらが散っていく、その風の“なごり”には、まるで水の無い空に波が立っているようだ。

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 貫之の歌の中でも、よく知られた歌です。桜の開花情報を追っていくと、「つぼみ」「ちらほら」「三分咲き」「五分咲き」「満開近し」「満開」「散り初め」「落花盛ん」などとあります。貫之は「落花盛ん」の状態を、“水のない空に波が立っているようだ”と、見立てました。

 ポイントは「なごり」です。同音異義語の「名残(なごり)」と「余波(なごり)」をかけています。春風がさあーっと吹いて、次から次へと花びらが散っていきます。「名残」は、余韻と解釈すればいいでしょうか。ひとしきり散ったあとの余韻が、「余波」のように見えるというのです。「余波」を「なごり」と読ませるのは、「波残り(なみのこり)」が「なごり」になったためです。落花盛んの景を、実際に岸辺に打ち寄せる波にたとえて表現しつつ、「名残惜しい」の意味も重ねているように思えます。単なるダジャレと言ってしまうには惜しい、ハイレベルな言葉遊びです。

さくらばな ちりぬるかぜの なごりには みずなきそらに なみぞたちける

 …いいですねぇ。日本語がきれいです。ぜひ、声に出して読みたい歌のひとつです。

9571(宇治川畔にて)

【957】

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