君ゆくや柳みどりに道長し(蕪村)
先日、旧友とともに郊外の道を車で走っているとき、きれいな柳並木に出会いました。王維の詩が頭に浮かびます。
渭城朝雨浥軽塵(いじょうのちょううけいじんをうるおし)
客舎青青柳色新(かくしゃせいせいりゅうしょくあらたなり)
勧君更尽一杯酒(きみにすすむさらにつくせいっぱいのさけを)
西出陽関無故人(にしのかたようかんをいずればこじんなからん)
(意訳)渭城の朝雨が軽い砂ぼこりをうるおしている。宿の前の柳は青々と色鮮やかだ。さぁもう一杯君に酒を勧めよう。西のかなたの陽関を出れば、もう友人はいなくなるのだから。

この季節、延々と続く柳並木は、たしかに「柳色新たなり」です。かつて中国では「折楊柳」といって、旅立つ人に柳の枝を折って贈り、前途の無事を願ったのだそうです。次は蕪村の句です。
【君ゆくや柳みどりに道長し】(きみゆくややなぎみどりにみちながし)
(意訳)今旅立とうとしている君に柳を送ろう。前途にははるかに長い道のりが待っている。
王維の詩から、(旅立つ)友人、柳の緑、(前途の)長い道のり、だけを残し、「朝雨」「客舎」「酒」「陽関」をカットしています。それでも送別の心は伝わってきます。王維の詩を知らなくても、十分鑑賞にたえます。換骨奪胎と呼ぶにふさわしい一句です。

【975】
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