立て見よ敷物はなし春の月(毛吹草)
毛吹草巻第5春にある光有という人の句です。
「春月」
【立て見よ敷物はなし春の月】(たちてみよしくものはなしはるのつき)
(意訳)立ちながら見てくださいね。(座って見るための)敷物はないですよ、春の月には。
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新古今集巻一、大江千里の歌、【照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき】(照るわけでもなく、曇るわけでもない、そんな春の夜の朧月に勝るものはない)を踏まえています。『しくものぞなき=勝るものはない)』を、『(朧月を見るための)敷物は無い』に転じたところが俳諧です。
毛吹草というのは江戸時代初期の京都の人、松江重頼(まつえしげより、1602-1680)の編です。俳諧の作法を記した「俳諧論書」とされますが、要するに言葉遊びの例を列挙してあるだけのことです。この句は、現代でいえばレベルの高いおやじギャグといったところでしょうか。よく知られた大江千里の歌を引いているのでわかりやすく、落語の大喜利で使えそうです。おそらく座布団一枚いただけるのではないかな(笑)
【980】
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