神山やおほたの沢の杜若ふかきたのみは色にみゆらむ(藤原俊成)
藤原俊成の歌です。
【神山やおほたの沢の杜若ふかきたのみは色にみゆらむ】
(かみやまやおおたのさわのかきつばたふかきたのみはいろにみゆらん)
(意訳)神山(上賀茂神社)への心からの願い事は、近くにある大田の沢のカキツバタの紫色にあらわれているようだ。
ーーーーー
俊成「五社百首」の一首です。「五社百首」とは伊勢・賀茂・春日・日吉・住吉の五社に奉納された、堀川百首題に基づく俊成自詠の作品集です。文治5年~6年(1189~90)の作。「神山」は、上賀茂神社の御祭神「賀茂別雷大神」が降臨したと伝えられる山で、『こうやま』とも読みます。「色」とは「恋心」の意味でしょうか。高貴な色とされる紫の花を咲かせるカキツバタには、何か寓意があるのかもしれません。
(大田神社)
歌に詠まれている「大田の沢」は、上賀茂神社境内の外にある摂社「大田神社」の脇にあって、上賀茂神社から東へ歩いて10分ほどのところにあります。カキツバタ群落は、かつて京都盆地が湖であった名残として、昭和14年に天然記念物に指定されたそうです。ちょうど今の季節が見ごろです。
一面のカキツバタです。
約25000株のカキツバタが自生しているとの由。尾形光琳の「燕子花図(かきつばたず)」も、ここの群落をモデルにしたのではないかといわれています。
俊成が歌を詠んだ当時も、現在と同じような風景だったのでしょうか。八百数十年前に思いを馳せて感動しました。見ごたえがありました。
参考:「藤原俊成全歌集」(笠間書院刊)
【994】
« 歌舞伎鑑賞教室(南座にて) | トップページ | 絵師も此匂ひはいかでかきつばた(良徳) »
「 勝手に鑑賞「古今の詩歌」」カテゴリの記事
- 夏風邪はなかなか老に重かりき(虚子)(2014.05.21)
- 後夜聞仏法僧鳥(空海)(2014.05.20)
- 夏といへばまづ心にやかけつはた(毛吹草)(2014.05.19)
- 絵師も此匂ひはいかでかきつばた(良徳)(2014.05.18)
- 神山やおほたの沢の杜若ふかきたのみは色にみゆらむ(藤原俊成)(2014.05.17)
「 おでかけ」カテゴリの記事
- 神山やおほたの沢の杜若ふかきたのみは色にみゆらむ(藤原俊成)(2014.05.17)
- 歌舞伎鑑賞教室(南座にて)(2014.05.16)
- 第三十二回 春の古書大即売会(2014.05.01)
- われわれも花に袖する御室かな(蘭更)(2014.04.16)
- 2014二条城ライトアップ(夜桜)(2014.04.01)
コメント