絵師も此匂ひはいかでかきつばた(良徳)
犬子集より、江戸時代初期の俳人、鶏冠井良徳(かえでいりょうとく、1589-1679)の句です。
【絵師も此匂ひはいかでかきつばた】(えしもこのにおいはいかでかきつばた)
(意訳)絵師ならば、このカキツバタの匂いをどのように描く(嗅ぐ)であろうか。
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鶏冠井良徳は京都の人。松永貞徳の門人で高弟、貞門七俳人のひとりだそうです。現在、京都市の西隣の向日市に「鶏冠井」と書く地名があって「かいで」と読むので、私はてっきりこの人も「かいでりょうとく」だと思っていました。参考書はどれも「かえでいりょうとく」になっています。鶏冠を「かいで」と読むのは、『ニワトリのトサカとカエデの形が似ているから。カエデが転じてカイデになった』と、高校時代に日本史の先生に教えてもらいました。もともとは「カエルデ(蛙手)」からきていると習った覚えがあります。
この句、美しく咲くカキツバタを前に、いくら上手な絵描きでも匂いまでは表現することはできないだろう、と興じてみせました。犬子集には春可という人の句で、
【硯出せ思ふ当座をかきつばた】(すずりだせおもうとうざをかきつばた)
というのもあります。同様の趣向とはいうものの、「カキツバタ」を「いかで書きつばた?」、「匂い」を「いかで嗅ぎつばた?」と二重にシャレてみせた良徳さんの句のほうが、気が利いていて笑えます。
【995】
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